1.本バレンの種類

1-1 本バレンの種類

バレンの構造(写真は16コバレンの例;説明用に分解したもの)

包み皮を取り除くと、バレン芯が見える、その上に当て皮が被さっている、こんな構造になっている。

バレンの種類は
•ベタ面用
•細かい線用
•大きな板で広い面用
 などを作り、使い分けします

摺り上げる版の部分によってバレンを使い分けするので、バレン芯の撚りの細かさと太さの異なったバレンを作るのです。

1-1-1 バレン芯の目の細かさと太さ

バレン芯の撚りの細かさと太さの異なったバレンが存在するのです

【バレン芯の綱の太さ】

バレン芯の太さ(mm)と、呼称の関係を次に示します
芯の太さの呼称 ⇒ 細芯/中芯(普通)/太芯
8コ撚りバレン ⇒ 細芯4.0mm  /  中芯4.5mm  /  太芯5.0mm
16コ撚りバレン ⇒  中芯6.0mm  /  太芯7.0mm

【バレン芯の目の細かさ】

8コ撚り ⇒ 細芯4.0mm以下 = 線描などの細密表現向き、ツブシには不向き
8コ撚り ⇒ 中芯4.5mm = 標準
8コ撚り ⇒ 太芯5.0mm以上 = 広い版面向き、線描などは線間がにじむ
16コ撚り ⇒ 中芯6.0mm = ツブシに利く万能向き
16コ撚り ⇒ 太芯7.0mm = 広い面のツブシ向き

小口木版では16コの細目バレンを使うようですが、板目木版の場合は、ここに示したカテゴリーの理解で十分と思います。

側面から、バレン芯の厚さの違いをご覧ください

写真の一番左のみ16コバレン芯、他は全て8コバレン芯

同じ仕上がり径でも、綱の太さにより環の数が異なる

1-1-2バレンの外形寸法(大きさ)

バレンの仕上がり径は
12cm,12.5cm,13cm,13.5cm 各種です

標準的な径は12cmですが、私は比較的大きなサイズの作品を作るので、13.5mmのバレンまで作っています。更に小さな11cmのバレンまで作っています。

写真の左側バレン; 16コ直径12cmバレン芯

写真の右側バレン; 8コ直径13cmのバレン芯

 はじめて本バレンを作られる方は、8コ4.5mm中芯12cmのバレン作りをおすすめします

1-2 当て皮に要求される性能


 手との一体感を感じることができる弾力性をもつこと、適度な「しなやかさ」と云ったら良いと思いますが、それが求められます。
 掌(たなごころ)に伝わる版面の凹凸を感じながら摺ることができる。

 バレンは、少しの力で板面にある和紙に圧力を分散させ、多色摺りは特に、和紙の断面に少しずつ色の層を重ねていける道具で、ベタ面の摺りや、ボカシ摺りや、木目を出す摺りやゴマ摺りなど、自在にできるツールであることです。それを可能とするように、絵の具を吸い取る和紙とバレン芯をしなやかに介在させる重要なパーツです。

特に、比較的中心部分に力がかかるように、バレンの中央部分を下方に少し膨らむ(ほんの数mm、出っ張る)形にするのです。和紙を大小織り交ぜることで当て皮で膨らみを作るのか、それが難しい場合は、準ずる方法としてバレン芯をセットするときに小さなボール紙を当て皮の中芯に貼り付けることもあります。

1-3 摺りに要する時間とバレンの関係

 1-3-1  明るい色とバレンの関係

16コバレンは利きが強いので、ひとコスリでベタに摺れるので、重ね摺りも不要で、絵の具の層も薄く でき、明るい作品にも通じます。見当もずれにくいので、16コバレンは特に大きな作品を得意とする作家には必需品です。8コと16コを使い分けするのです。

ちなみに、私は色を作りません、皿の中で色を混ぜません。絵の具を混ぜてしまうと絵の具の持つ色が濁るからです。ほしい色は、一度摺った色面の層の上に、他の版で色の層を重ねて求める鮮やかな色を現わしています。

特に、絵の具は水干を使っています。水干の鮮やかな色を損なわないようにするため、混ぜないのです。(シロが入っていないもの)

そのイメージとしては、和紙の断面に色の層を思い描き、その異なる色の層が光を乱反射させてくれることから鮮やかな色彩で明るい色が出せるものと思っています。勝手な考えですが、透明なプリズムをイメージしています。

なので、摺りの時点でも極力一発で摺り上がりできるような工夫をするのです。ベタ面は特にゴマにならないようにしながら、一発でベタ摺りするイメージです。これには16コバレンが欠かせません。

しかしながら、漆黒のドブ墨の摺りに関しては、軽く何度も摺り重ねることで深い透明な黒を得ることができます。

摺りに使うノリについても私なりの理解のもと、先達から教えてもらったノリの作り方で、私は「魔法のノリ」と称して、常に使える状態のノリをガラス瓶の中に用意しています。

これらは体験してみないと理解できませんので、体験して体感してみてください。

1-3-2  摺りに要する時間と、和紙の伸び縮み

16コバレンは利きが強いので、軽い力でベタ面の摺りが効率よくできる。

更に大きな版の、広い面積のツブシを短時間に行うには、径の大きな13.0cmバレンや13.5cmバレンが効果を発揮します。和紙が縮まないうちに、見当がずれないよう、短時間でサッと広いベタ面を摺り上げることができるのです。